2023年は「惑う」一年でした。
人のうみだすエンターテインメントの儚さを感じた2023年。好きなものを好きでいられなくなると思った2023年。
それでもその板の上で懸命に生きる人たちのことは大好きだから、今も心をどこに持っていけばいいのか惑っています。
#2023年を振り返る
2023年のチケット半券は81枚でした。
今年は電子チケットも複数枚あったので実数は90弱くらいになるでしょうか。
舞台が28本、映画が17本、展示が7本。
複数回観ている舞台公演があるため半券枚数と本数の実数は異なります。
詳しい内訳はこちらに記載しています。
2023年に観た芝居の半数は宝塚歌劇月組公演でした。
現代のタカラヅカが描き出すもの
宝塚歌劇 月組公演『応天の門』『フリューゲル-君がくれた翼-』
贔屓目ですが月組公演は今年も出色の作品が揃っていたように思います。
何より注目すべき点は本公演2作品とも、トップコンビの恋愛を主軸に描かない作品だったこと!
特に『応天の門』ではトップコンビにラブロマンスが無くても良いじゃない!とすごくすごくポジティブな気持ちで思えたことが大きかった。恋愛が主軸じゃなくても大丈夫だという安心感。
月城さんと海乃さんそれぞれ自立したふたりだからこそ見えた世界だと思います。
一方で東急シアターオーブで上演された『DEATH TAKES A HOLIDAY』ではどっぷりと愛の世界を見せてくれたことも印象的。
モーリー・イェストンの大ナンバーも実に聴かせてくれて、選抜メンバーによる別箱公演ではありましたが、組全体の歌唱力の底上げにも繋がったと感じました。
月組のトップである月城さん・海乃さんコンビ、2023年はデュエットダンスも印象的でした。
『応天の門』と併演のラテンショー『Deep Sea』ではバチバチとした男女のやり取りが描かれたデュエットダンスでしたが、恋愛だけでは表せない信頼がそこにあると感じました。
2022年の『グレート・ギャツビー』も全国ツアー版『FULL SWING!』でも信頼感に溢れたデュエットダンスが好きだなぁと思っていましたが、そこから更に一段階上がったものを目にすることができたなぁと。素晴らしかったです。
そして珍しい芝居仕立てのショーとなった『万華鏡百景色』(『フリューゲル』と併演)は、輪廻転生していく花火師と花魁の物語という縦軸と東京というテーマの横軸の塩梅が巧みで。
どこで出会っても別れてしまう運命のふたりが遂に結ばれるという文脈がデュエットダンスで帰結する、あの多幸感に泣きそうになりました。
他組の公演では花組『うたかたの恋』も印象深い。
宝塚歌劇 花組公演『うたかたの恋』
柚香さんのルドルフは、今にも千切れそうなルドルフでした。今までの『うたかたの恋』で観ていた白軍服の王子様ルドルフではなく、孤独で疲れ切ったどうしようもない男ルドルフがそこにいた。
幕開きからむせ返るような"死の香り"に満ちていて胸が詰まりそうになる程。
柴田侑宏先生の名作が、時代に合わせた大胆な潤色により生まれ変わっていました。
受け継がれてきた名作を、時代に合わせて脚色できることを知れたのは大きな収穫だったなと。
月組の月城さん・海乃さんコンビと花組の柚香さん・星風さんコンビは退団が発表されています。
滲み出るような信頼感が芝居やダンスに表れていた両コンビ。退団が惜しまれますが最後のその日まで、お互いを尊重し研鑽されますように。
と、ここまでつらつらと感想を述べましたが。
宝塚歌劇団は2023年、深刻なハラスメント・労働環境が問題となり、団員1名のかけがえのない命が奪われました。
本当に悲しく、やり切れないです。
これは組織の問題であり、業界の問題であり、社会の問題でもあると感じます。
しかしながら組織としてまずこの問題にきちんと向き合ってほしいという思いが今も尚強いです。
この話題について触れるのはここで留めますが、今後も動向を注視していくべき問題だと捉えています。
ファンとして応援したいスターが今も所属している以上、まずもって環境が是正されることを強く望みます。
大女優の軌跡を辿る
2023年はフランスの大女優イザベル・ユペールの新作映画が2本公開されるとともに、キャリア最初期の主演作2本がスクリーンで上映された年でした。
特集上映「フランス映画と女たち」より『ヴィオレット・ノジエール』『レースを編む女』
ヨーロッパの女性映画監督を再評価するような特集上映がミニシアターで続々組まれる昨今、女性俳優とその身体へのまなざしを変えてみたいという観点で「映画と女性」について再考しようとしたという企画上映「フランス映画と女たち」。
なんと個人で企画(!!!)されたという特集で、10月にアテネ・フランセ、12月に菊川のミニシアターStrangerで実施されました。
そこで上映されたのがイザベル・ユペールのキャリア最初期の主演作である『ヴィオレット・ノジエール』と『レースを編む女』。
なるほど黒のユペール/白のユペールと。
どちらも凄まじい映画でしたが、瑞々しい若きユペール様はこの頃からブレていなかったことがわかり痺れました。
両作に描かれている母と娘の複雑な関係性、性について、そして印象的なラストカットという前情報をもとに見進めていくうちにどうしてもミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』を想起して身構えてしまったのは仕方がない。
イザベル・ユペールの代表作である『ピアニスト』。
むしろこの2作があっての『ピアニスト』なのだなと…すべての道は『ピアニスト』に通ずる…そう感じました。
この特集上映、まず企画主旨が良いなぁと。
ミニシアターで起きているムーブメントが相互作用していると感じられて、個人的に激アツでした。
言語の壁を前に観ることを諦めていた最初期の主演作。
それをこうして権利交渉し、日本語字幕を付け、大きなスクリーンで!!上映するべく企画してくださった竹内航汰さんに、いちユペールファンとして心からの感謝を申し上げます。
『私がやりました』『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』
そして2023年に劇場公開されたイザベル・ユペール最新の出演作2本。
『私がやりました』は大好きなフランソワ・オゾン監督の最新作で、皮肉たっぷりのシスターフッド・クライムコメディ!
最低な男たちと戦う二人の女性と、そこに乗っかるイザベル・ユペールの可笑しみがたまらなかった。
そして『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』は一変してシリアスな、実話をもとにした社会派サスペンス。
この映画に繰り返し出てくる「良い被害者」という恐ろしい言葉。
原発会社の暗部を告発した女性が性加害を受け、それを全て自作自演だと権力を持つ側に断罪される。これが実話だというのだから恐ろしい。そしてこの恐怖は昨今の本邦にも感じる。
ラストカット、映画を観るこちら側に向けられたイザベル・ユペールの貫くような視線は『レースを編む女』から45年の時を経てなお、観るものに静かに強い意思を訴えかけてきました。
『レースを編む女』と『ヴィオレット・ノジエール』には共通項があり、『私がやりました』は『ヴィオレット・ノジエール』へのオマージュもあり。
ユペールの視線がこちら側に向けられるラストシーンは『レースを編む女』と『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』どちらも共通しており。
そして『私がやりました』と『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』は作風のテンションの違いはあれど、どちらも女性の受けた性加害が物語の発端になっている。
イザベル・ユペール最初期の主演作2作と最新の出演作2作、この4作品は繋がっているようにも感じられました。
愛するイザベル・ユペールの過去から現在に至るまでの軌跡を映画館で辿れたことは本当に幸せなことでした。
劇場職員を退職して
妖精大図鑑『無関係のジョバンニ』
2023年のベストに挙げたいのは妖精大図鑑の『無関係のジョバンニ』。
縦横無尽のダンス・コント・オムニバス!とてもとても豊かな時間でした。
完全暗転が叶うブラックボックス型の劇場機構を利用したシーンや、舞台奥のシャッターが上がるカタルシスを予感させつつちょい出ししてくるところがとてもツボで。
こんなに特性を活かしてくれて劇場も喜んでいることでしょう!と謎の立場から泣きそうになった。
2023年は5年間在籍した公共劇場を退職した年でもありました。
そんな前職場となった劇場に久方ぶりに訪れたのがこの『無関係のジョバンニ』で。こうしてただのお客さんに戻っていくのだなと感じた時間でした。
岩渕貞太身体地図『ALIEN MIRROR BALLISM』
その前職場のラインナップばかりで恐縮ですが…コンテンポラリーダンス公演では岩渕貞太身体地図『ALIEN MIRROR BALLISM』も素晴らしかったです。
豊かな時間がそこにあり、この豊かさに魅せられたんだったと初心のようなものを思い出して切なくなって泣きたくなりました。涙が出るほど良かったです。
気が付いたら心身をすり減らしていた5年間でしたが、私が在籍していた頃に選定されたラインナップはやっぱり面白かったなと。そこに少しだけ関われたことに少しだけ胸を張りたい気持ちです。
その他、思いつくままに
SixTONES『慣声の法則 in DOME』
念願だったSixTONESのコンサート、それも東京ドーム公演を観に行けたことも嬉しかったです。
ど派手な舞台機構と特殊効果。LIVEであり、アトラクションのような時間だった。
自分たちの音を楽しんでいるSixTONESの6人がドームのフロアを揺らしたあの時間を忘れたくない。
国立工芸館 ポケモン×工芸展
伝統工芸品とポケモン、文字の通り老若男女が世代を超えて長蛇の列を成し注目して楽しんでいる様子に胸が熱くなった。
国立の施設が主体となって発信する意義を感じる内容でした。
このとき家族旅行で初めて訪れた石川県。元日に発生した地震による甚大な被害に胸が痛みます。
被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復興を願っています。
十二月大歌舞伎『天守物語』
歌舞伎は『天守物語』が忘れられない。
七之助さん初役の富姫は残念ながら見逃しましたが、間を空けずの再演ですぐに観られたこと、そして玉三郎さんの亀姫初役なんてとんでもないタッグで観られたことは筆舌に尽くしがたいよろこびでした。
仲良く頬を寄せながら人間社会を冷たく見下ろしている富姫と亀姫。ぞっとするほど美しかった。そこにわたしのサンクチュアリがありました。
歌舞伎も旧ジャニーズも色々ありました。
2024年、日本のエンターテインメント文化はどうなっていくのでしょう。
私自身としては、2024年はコンテンツとの向き合い方を見つめ直さなければいけないなと。
応援している月組の行く末を見守りつつ、自分自身の身の丈も見つめたいです。
そして今年はいよいよ、およそ20年間待ち続けた劇場版機動戦士ガンダムSEED FREEDOMが公開。これでやっと平成を終わらせられる。心して待ち構えています。
募るガンダムSEEDへの思いもまたこちらに綴れたらと思います。
長くなってしまいましたね…。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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